クラクション

伊坂幸太郎さんの小説で『 生きるのを楽しむコツは二つだけ。クラクションを鳴らさないことと、細かいことを気にしないこと 』と文章がある。それを読んだ時以来、車のクラクションを鳴らしたことがない。正確に言うと、クラクションを鳴らしたくなくなってしまった。

 

無理に車線変更してくる車、信号が変わっても飛び出してくる車、僕は鳴らさない。「 やれやれ 」と想うだけ。何故なら、僕は他の車によく鳴らされるから。スピードは飛ばさない、後ろの車はクラクションを鳴らす。僕は動じない。僕は銀行強盗をして逃げているわけじゃない。特に急ぐ必要もない。観たいテレビ番組なら、家を出る前に録画設定をしている。

 

前に入りたがっている車や、右折したい車を譲る。ほんの30秒ぐらいの話だし、僕がしなくても他の誰かが譲るだろうけど、譲った僕にクラクションを鳴らす後ろの車。やはり僕は動じない。時限爆弾が積まれた車を追っているわけじゃないから慌てる必要など全くない。

 

ラクションを鳴らす運転手は、銀行強盗をして警察から逃げてるかもしれない、時限爆弾を積まれた車を追いかけているかもしれない。

 

妻が運転するとき、そんな車に「 どてかましたろうかぁ! 」と妻は言う。僕は助手席で縮こまって、車から、クラクションなんてなくなればいいのになぁ〜と想う。

 

そんな細かいことを気にしていたら、人生を楽しめないなぁ〜と考えたりもする。