父の靴
中学一年の時『 父の日 』に靴をプレゼントしたことがある。お小遣いをせっせと貯めて、父親がよく履いていたニューバランスを。
こんなこと書いてしまうと僕がとっても『 いい子ども 』だったことがバレてしまいそうだけど、そうじゃない。
父親はボロボロになるまで、その靴を履いてくれた。その靴を玄関で見る度に優しい気持ちになれた。ある時、父親が新しい靴を買ってきた。それもニューバランスだった。ただ明らかに僕がプレゼントした靴と父親の買ってきた靴の大きさが違っていた。
僕がプレゼントした靴は、父親の足のサイズと2センチも近く小さかった。父親は、そのことについて一言も僕に言わなかった。僕はそれ以来、誰かにプレゼントをするのが怖くなった。
「 それは父親の優しさだよ 」とあなたは想うかもしれない。確かにそうだ。ただ、本当に大切な人のことは『 知っておく 』べきなんだと想う。
何故、そんな昔の出来事を思い出したかと言うと、6歳の次男が僕と似た様な事を父親の僕にしたから。思わず苦笑いをしてしまう。父親はまだ覚えているだろうか?