ATMに傘

時々、ATMに置き忘れられた傘を見かける。彼は、あるいは彼女は、何故、傘を置いていったのだろうか?それを見る度に僕は想像してしまう。

 

通帳口座の残金を見て彼らは、やけになったのかもしれない。もしくは、逆もありえる。こんだけあれば傘の1つや2つ買えるぜ、と。

 

ひょっとしたら、この傘は映画『 キングスマン 』みたく武器になるのではないか?

 

となると僕は度々、試されてるに違いない。この傘を僕が拾うか拾わないか、それを監視カメラが見張ってる。この傘をとったら最後、僕は悪の組織ゴールデンサークルと戦わないといけなくなる。恐らく、ATMは変形して地下に続く階段が現れるだろう。そこで僕はあらゆるマナーを教えてもらいキングスマンに相応しい人間にならなくてはならない。

 

正直、参ったなと想う。僕はタコ焼きと三ツ矢サイダーを買う用事のついでにATMに寄っただけなのに。僕の帰りが遅かったら家族だって心配すると思う。

 

だから、僕はその傘を拾わない。僕じゃない人がいつか拾うかもしれない。もしくは、誰も拾わないかも知れない。残念ながら、世界を救うよりも大切な事を僕は知っている。ホントに。