うなぎ

妻と結婚して14年間、僕はうなぎを食べていない。理由は簡単で妻は、うなぎが好きじゃない。僕は違う、子どもの頃から、うなぎが食卓に並ぶと小躍りしてしまうくらい好きな食べ物。

 

今朝、妻が「 晩御飯、うなぎにしよう 」といった。始め僕は何かの聞き間違いだと思った。戸惑っている僕に「 うなぎでいいよね? 」と妻は不思議そうに僕に言った。

 

勿論、僕は食べたいね、と答えた。そうでなければ、このチャンスを逃せば更に14年かかるかもしれない。

 

「 1人で食べればいいじゃん? 」とあなたは分かり切った事を聞いてくるかもしれない。僕は1年の間362日は家族と一緒に晩御飯を食べる。テーブルに嫌いな食べ物があったら妻は、どう思うだろうか?

 

「 じゃあ、昼ご飯でいいじゃん? 」とあなたは阿呆の様に聞いてくるかもしれない。『 うなぎは、夜に食べるにかぎる 』スタン・ゲッツが『 JAZZは、夜の音楽なんだ 』と言ったように、うなぎは夜の食べ物なんだ、と僕は言いたい。

 

そして、今日、長い長い眠りから目覚めたうなぎが、我が家の食卓に並ぶことになる。彼は、どんな思いで僕に食べられることになるんだろう。大丈夫さ、僕は君のことを絶対忘れない。妻が心変わりしないよう、祈る気持ちで、これを書いている。