4円

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3ヶ月前、財布を落とした。落としたことに全く気付かず、交番から電話があり慌てて取りに行った。

 

運良く拾ってくれた人は、丁寧に交番まで届けてくれた。財布の中身は車の免許証、保険証、会社用のクレジットカード3枚、TSUTAYAのカード、現金が入っていて、落とす前と何も変わっていなかった。

 

交番の警察官は、僕にこう言った。「 少なすぎじゃない? 」と。初め「 少ない 」が何を意味してるのか分からなかった。だから「 どう意味ですか? 」と僕は答えた。

 

交番の警察官は呆れ顔で「 現金 」と言った。財布の中身は4円しか入ってなかった。「 たまたまですよ 」と僕は苦笑いで答えた。

 

なんとなく映画『 スリー・ビルボード 』の警察官役のサム・ロックウェルに似ているなぁ〜と思っていたら「 それにしても、少なすぎでしょ? 」とサム・ロックウェルは笑いながら、僕に言った。

 

僕は、そのサム・ロックウェルに、財布の4円を使って、両目と両乳首にテープを貼ってやりたかった。

 

「 財布の中にいくら入っていたら、正常なんだよ! 」と怒鳴りたかった。でも僕はソフトに「 いくら入っていたら、正常なんですか? 」と言った。

 

サム・ロックウェルはポカーンとした顔で考えていた。僕は財布のことに礼を言い、交番から歩いて帰った。僕はお金は好きだし、沢山あったら嬉しい。ただ財布の中身が4円だろうが400万だろうが4兆円だろうが、僕自身何か変わるわけでもない。

 

時々、サム・ロックウェルのいる交番を通る。その度に『 正常 』のことを考えてしまう。