バリウム

いや、言わなくても分かってます。「 たかがバリウムじゃないか?」と。「 何をそんなに怯える必要があるの?」と。

 

僕だって36歳だし、身体の中身は見た目じゃ判らないし、幾度となくスルーしてきたバリウム検査を必死の覚悟で昨日、終えたわけです。生きている限り、死と税金とバリウムだけは避けれないんだと。(生まれて初めての『覚悟』です )

 

そもそも『 バリウム 』って名前からして凄く怖い。手術台の上に寝かされ、巨大なコンドームを頭から被されそうな名前だ。お医者さんは僕にゆっくり、その巨大なコンドームを被せながら「 大丈夫です、心配いりません。このコンドームは市販で売ってる物よりは、だいぶ薄くなってるんです 」と何でもなさそうに言う。いや、そう言う問題じゃないんだ!と僕は叫ぶけれど、お医者さんの耳には届かない。いや、違う、お医者さんは僕の声は届いているのに、わざと無視している。そうに違いない。

 

って、ザワザワしてしまうくらい怖かった。そんな僕を救ったのは、病院の待合室にあった一冊の小説だった。村上春樹さんの『 ねじまき鳥クロニクル 』僕は村上春樹さんの書く物語が大好きで、これを見た瞬間「 僕は、バリウム検査を無事に乗り越えれるかもしれない 」と涙目で思った。そして、人間は好きな物を見た時、穏やかな気持ちになれるんだ、と僕は思った。僕は負けない、巨大なコンドームなんかに負けてたまるか、と。

 

だから、どうかあなたも気持ちが塞いでしまった時は、好きな物を思い出して下さい。僕と同じ様な気持ちになる筈だから。